R_OMの日記

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映画備忘録「2017年9月」

 

 

 

 

『散歩する侵略者』を観ました

黒沢清作品で、近作で特に顕著な「愛する人が変容してしまい、その変容に対してなすすべもなく、最終的にはそのことを受け入れる」という、お得意の物語構造に、ツイストしたかたちではありますが「愛は地球を救う」という要素を上乗せすることで、ある種のブレイクスルーを果たそうとした作品という印象を受けました。

前作『ダゲレオタイプの女』(個人的には黒沢作品の中で一二を争うぐらい好きな作品)は分かりやすくクラシック映画のような佇まいの「愛の物語」でしたが、本作はよりフィクション度の高い現代的な「愛の物語」になっており、本作の反応次第で、場合によっては今後黒沢清作品でありながら商業的な成功をおさめる作品が出てくるかもしれないなと思いました。

個人的な感想ですが、かつて父がある病気になり、前日まで元気だったのに突然ひとりで歩くこともままならないような状態になってしまった経験があったので、序盤の突然日常が揺らいでしまって動揺し苛立っている長澤まさみの様子に、当時の母の様子を重ねてしまい(うちの父は浮気はしてませんでしたが)、見ていて結構辛かったです。話が宇宙人が自立していく方向に向かうので、途中からいつもの黒沢清映画らしくなっていきますが、序盤は、もしや黒沢清も作品内で大々的に介護と向き合う時代になったのかなんて思いながら観ていました(もし過去にそういった作品があったらすみません)。

そういったこともあり、とにかく夫を嫌々ながらも献身的に世話していく長澤まさみが愛しくて仕方ありませんでした。その上、いい意味で所帯染みた長澤まさみの佇まいが余計に色気を感じさせ、夫の松田龍平がその愛情に次第に応え始めていくのも納得というか。と同時に、本当になぜもっと早く、乗っ取られる前の真治は彼女の愛情に応えてあげられなかったのかと思うと悔やまれる部分もあり、いつだって人は失って初めてその大切さを知るのだなと。

そういった愛の物語という側面に感銘を受けながらも、全体的にポップな作りのため、黒沢清ならではのダークさが若干後退してしまったことに物足りなさを感じてしまったのも正直なところで、高橋洋が参加しているスピンオフの『予兆』の方にダークさの補完を期待してしまうのも仕方ないかなと。もしかしたら黒沢清版の『散歩する侵略者』は、二作を観て初めてきちんと評価できる作品かもしれないですし。

 

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